キャベツの話
うちの近所の道端で、いつも野菜を売っている方がいる。
70代ぐらいの女性。
人が行き交う遊歩道で、地べたに野菜や餅を並べて売っている。
こういう、「露店」は市場の近くや買い物客でにぎわうエリアではよく見かける光景だけれど、この界隈はアパートが建ち並んでいて周りにはそういう露店や市場もなく、その女性はただ一人、そこでいつもいつも、野菜や餅を並べている。
あまり見かけないゴーヤを売っていることがあって買ったことがあるし、急にキムチを漬けようと思い立った時に万能ねぎを切らしている時にもここで買ったりした。
かなりお年を召したおばあちゃまかと思いきや、実際に話してみると声にも張りがあって若々しい。
そう、いつもだいたい、そこにいるこの女性。
日が暮れても、いる。
数回、この女性が「閉店」している日があり、逆に「体を壊したのかな」と心配になったりもした。
先週、釜山は零下7度まで気温が落ち込み、私もただの山道の散歩に出かけるのに手袋にネックウォーマーに、インナーは3枚重ねにロングのダウンコートという服装だったのだけれど、「まさか今日はいないだろう」と思ったその日も、その女性はいつものように野菜を並べていた。
零下の日に、地面から上がってくる冷気は、想像しただけでもオソロシイ。
散歩に出たので財布は持っていなかったのだけれど、何を売っているのかなとのぞいたら、品数はいつもより少なく、野菜はなくて餅を並べていた。
トック用の餅を売っていたので、あとで財…