良いところ。

平日の夕食。
家族が一緒に夕食の席について一緒に食事を取る。
当たり前の事のようだけど、実はとってもラッキーで幸せな事だと、最近思うようになった。
あと数年もすれば子供達と一緒に食卓を囲む事も難しくなるのかも知れないし、私たち夫婦もずっと一緒とは限らないのだ。

それに気づいた私は、貴重なこの時間を思いっきり楽しく、大切に過ごそうと思い立ち、気持ちも新たに。

せっかくの、私の「楽しく過ごそう」という意気込みに反して子供達は些細な事で言い合いを始める。

彼らの言い合いはねぇ、私たち夫婦の、一言ごとに声が大きくなっていって、最終的に「うるさい!」「ふざけるな!」で終わるケンカと違って、理論的で、何と言うか細かい例を出して相手を負かそうとするので、ケンカが長くなるのです。
彼らのケンカが始まると、夕食の間中、その話題で終わってしまうので、私は話題を切り替えるべく、口をはさむ。

ちょっとさぁ、もっと建設的な話をしようよぉ。Constructive。ね?そうでしょ?ポジティブにいこうよ、ね。細かい事言わずに。

同調したように、リーさんが言う。

ジェイク。弟の良い部分、弟ではあるけれど見習わなければ行けない部分が探せばたくさんあるだろう。アロンの良いところを言ってみろ。

ジェイクは、実はケンカを終わらせたかったのか、ただのこれ見よがしなのか、すらすらとアロンの長所を言って見せた。

頭のいいところ。
我慢強いところ。
友達に優しいところ。


ふむふむ。私も黙っていられない。アロンの良いところは、たくさんあるんだもんね。私にも言わせて。

情が深い。言わなくても人の心がわかる。何にでも全力投球。ウソをつかない。言った事は守る。男らしい。

よしよし。それぐらいでいい。
じゃ、次。ジェイクの良いところを、アロン、言いなさい。


・・・。

ソーシャルライフは、うまい。(お調子者を言いたかったに違いない。笑)
は、いい。(ずる賢いという事を言いたいに違いない。)
ふん。それぐらいかな。

忌々しげに弟を見つめる兄。
アロンは澄まし顔で、チキンナゲットをパクリ。

はいはい。じゃ、次。オンマの良いところを言いなさい。

えー。いいわよ私の良いところなんか。わざわざ口で言わなくてもみんなわかってるでしょう。けっけっけ。

何やら考えている息子達。
案外真剣に考え込んでいる。
オンマのよいところ。

・・・。
・・・。

多すぎて言えないのか。どれから言おうか迷っているのか。

早く言いなさいよ。何でもいいから。
頭がいいとか、優しくて綺麗で友達に自慢出来るとか。


苦渋の表情で絞り出したジェイクの第一声。

えーっとぉ。送り迎えをがんばってくれるとこ、とかかなぁ。

がっくり。
そんな事?考えて考えた末に、そんな事しか??

あと、朝早く起きてくれる事、とか。もごもごもご。

そういう即物的で、目に見える部分じゃなくてさぁ。
僕たちの事を世界で一番理解してくれるところ、とか、いつの時にも的確なアドバイスをくれる尊敬するオンマ、とかさぁ、そういう事、考えた事ないの?そういう、精神面での支えに、なってるでしょう私。
私は「わざわざ言わなくてもいいわよそんな事ぉ。」と謙遜する準備まで整っていたというのに。ぶふっ。

ところで、上に書いたのはジェイクの発言で。

アロン、言いなさいよ何か。何もないの?そんなわけないでしょう。

と、つい声に力が入り、眉間にシワがよりそうになる私。私は思いっきりほめてあげたのに。
ギブ&テイクって事を知らないらしい。え?そういう問題じゃない?

アロンはしばらく考え込んで、これも苦しそうに絞り出しているように、言った。

ワインの味を、ね。これはおいしい、とかこれはまずい、とか、一口飲んだらすぐわかるところ。




はぁぁぁあ。
アロンは心なしか、私に申し訳なさそうに伏し目がちで、それで尚更、彼が本心からそう言っているのがわかる。

もういいよ。そんな事で私を尊敬していたのか息子は。

最後に残ったリーさんのよいところ。
子供達はスラスラと、父親のよいところを並べてたよ。

満足そうに焼酎をすすりながらうなづくリーさん。
リーさんの目が潤んで顔が赤くなっているのは、お酒のせいだけではない気がする。
子供達から見て、リーさんのよいところがどんなところなのか、悔しいのでここでは書かない事にする。

ふんっ。裏で息子を買収しているんじゃないだろうか。
何か買ってもらう約束してるんじゃないの。
勝手にやってくれ。

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